2013年6月14日金曜日

プロ野球・統一球を品質管理の観点から見る


やっぱりそうだったか!

6月12日に日本野球機構が突然発表した「統一球を本年度から反発力の大きい飛ぶ球に変更した」との報道に唖然とした。


調べると、公式球は重量141.7~148.8g、円周22.9~23.5cmと規則で定められており、反発力はコミッショナー事務局によって実測され、反発係数が0.41~0.44の基準を満たすボールが合格となり、公認マークが付けられる。(左写真)


 この公認試合球の統一前は4社(ミズノ、アシックス、久保田、ゼット)が試合球を製造し、主催球団に納品していたが、メーカにより飛びが違うなどの問題や、WBCなどの国際試合への慣れのために、2011年のシーズンからミズノ株式会社1社に統一したとのことです。
この統一球の採用後、ホームランが激減し、「一発逆転」の場面が減り、プロ野球は面白くなくなったと感じた人は少なくなかったと思います。
これらの興行面での配慮もあって、今年の公認球の反発係数が上方修正されたものと思われます。
最近8年間の各チームの一試合平均のホームラン数の変化を分析したのが次図です。(2013年度は6月13日分まで)

 
 明らかに2011年、2012年度のホームラン数は以前より激減し、飛ぶ球に変更した2013年度は12球団平均で昨年の1.5倍に増えています。
このグラフをよく見ると、2006年から2010年に向けて球団ごとのホームラン数のばらつきが拡大したのに対して、統一球の採用以降、球団でのバラツキは抑えられています。
 12球団の一試合平均ホームラン数とその標準偏差を示したのが次図で、確かにバラツキは低減しています。

 通常の生産現場での品質なら、2011年から工程品質を改善し、ばらつきは減ったが現物は下方管理限界(LCL)を下回るものが頻発のため、2013年からXバー(平均値)を上げるように設計を改善した、ということになりそうです。


 
 以前から球場の広さやドーム球場と風の影響を受ける球場の差に加えて、主催球団ごとに決まっていた試合球の種類など、ホームランの出方には不公平感が有ったようです。
 統一球の一つの狙いであった今年のWBCは優勝できなかったが、2013年から“黙って切り替えた”反発係数の高い「統一球」は野球を面白くし、以前の4社供給によるばらつきによる不公平の対策にもなり、意外に有効だと思われます。                                                                                                                                             坂井